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義務教育学校のココに期待!

更新日:2022年11月23日

義務教育学校の数が増え続けています。義務教育学校とは小学校と中学校の計9年間の義務教育を一貫して行う学校です。2016年に制度化され、令和3年度までに151校が開校しました。


 

なぜ義務教育学校はこのように増え続けているのでしょうか。一つは戦後の児童生徒数増加期に建設された学校施設が老朽化し、建て替えの時期を迎えていることが関係しています。施設が老朽化して補修改修の時期を迎える一方で、急激に児童生徒数は減少しています。個々の小学校・中学校の存続さえも同時に検討する必要があります。

 

 規模が縮小する一方の学校施設を建て替えるに当たり、近隣の学校の統合を検討する必要もありました。さらに小学校・中学校という2つの学校種の統合も視野に入れて検討が行われるようになりました。

 

 1つの地域の中に小学校・中学校の2つの学校を建設し、維持管理していく財政負担は大変なものです。普通教室や特別教室だけでなく、体育館やプール、グランドや球技場などそれぞれ複数建設する必要があります。当然これらを統合して一つの施設として建設し、維持管理していくほうがお金の面では明らかに効率的です。


 学校施設の建設費用は、耐震基準の強化やバリアフリー化の推進・ICT環境の整備など、財政負担は重くなる一方です。加えて、多くの学校施設は災害時の避難施設としての機能も備えなければなりません。限りある財源を効率的に使うことを考えれば自然と小学校と中学校の一体化は検討課題となります。



 


建設費維持費の効率化は、小中一貫校というかたちで校舎を一体化することでも可能です。しかし義務教育学校にすることには他にも様々なメリットが期待できます。


 一般に挙げられるのは、「中1ギャップの解消」です。また6・3制が現代の児童生徒の発達の実情に合わなくなったことなども指摘されます。義務教育学校では、6年-3年の区切りを、5年-4年や4年-3年-2年にするなど、早期化する児童生徒の成長に合わすことができます。

 

 しかしこうしたことはなかなか生徒個々の実感としては感じにくいところです。



 

 義務教育学校では、小学校と中学校に振り分けられた教育課程を、柔軟に入れ替えることも認められています。

 例えば、日本の歴史については、小学校6年で一通り取り扱い、中学に入って改めて原始から学び直します。例えばこれを6年次から7・8年次の期間で丁寧に取り扱えば、もっと短い時間で深く学ぶことが可能かもしれません。

 

 理科の天気は小学校4年と5年で取り扱い、中学2年で再び取り扱います。算数や数学のように積み上げていく教科では図形分野や比例・関数などの分野をまとめて取り扱うことで学びが理解しやすく深まることも期待できます。

 

 おそらくこのようなカリキュラムの調整を行うことで、「思い出し」や復習に費やしていた時間が大幅に短縮できると思われます。


 また、小学校の卒業準備のための時間と中学入学直後のオリエンテーション期間についても大きく効率化されることが期待できます。

 

 これら効率化された時間は、理解を補う時間や深める時間として有効活用することができます。




 小学校と中学校の大きな違いに、クラス担任制と教科担任制があります。小学校では1人の担任がほぼすべての教科を指導します。これは幼児から児童期に移行する幼い子どもには、安心感のある方法ですし、指導する教師の側でも子どもの様子を丁寧に観察できるメリットになります。

 

 中学校の教科担任制には、専門的な指導技術が期待できます。義務教育学校では、このクラス担任制と教科担任制を教科によって設定することも可能です。例えば、英語は中学英語免許を持つ教員が最初から指導したり、美術や音楽なども早くから教科免許の指導者に委ねたりすることもできます。


 学習に留まらず、部活や特別活動でも広い年齢層によるグループを作ることができるでしょう。特にチーム競技の人数集めに苦労している過疎地域では、部活の参加を5年次生くらいまで下げることで、対象人数を一気に増やすことが可能となります。

 

 これは、児童生徒の様々な才能の早期育成にも繋がります。


 学習発表や体育祭・文化祭などの行事を8・9年次生(中3・中2)がリーダーとなって、義務教育前期生(小学生)を指導するなどの場面では、指導する側される側に双方にとって意味のある体験が期待できます。


 メディアセンター機能や学童(放課後児童健全育成事業)を備えた学校では、義務教育後期生(中学生)が前期生の遊びや学習の面倒を見るなどいう場面もあるかもしれません。


 また、文科省では、教員研修についての効果を期待する向きもあります。小学校と中学校という異なる教育文化を持った教員同士が情報交換や切磋琢磨することによる効果への期待です。



 

 小学校と中学校という長い歴史の中で培ってきた異なる文化が接することで、イノベーションが期待される分野もあります。それは校則です。

 

 ご存知のとおり中学校では「生徒手帳」や「生活指導」というかたちで校則に沿った生活を送るという方法が取られてきました。これが小学校と一体化してその垣根が取り払われるわけです。


 制服や髪型などの指導基準はどうなるのでしょうか。1・2年次生はキャラクター柄の靴下を履き、色とりどりの私服で登校することがおそらく容認されます。6・7年次生はどうしましょうか?ランドセルや通学カバンはどうなりますか?


 これから開校する義務教育学校については、是非そうした学校文化の隅々まで、ゼロから再検討していただきたいものです。


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