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「令和の日本型学校教育」と通信制高校

更新日:2022年8月26日

「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高校の在り方に関する調査研究協力者会議の第7回が開催されました。



これは、令和3年1月の中央教育審議会答申『「令和の日本型教育」の構築を目指して~』~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」及び令和3年2月の「通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議審議まとめ」を受け、対面指導の重要性や質保証の観点等を踏まえた通信制課程のこれからの在り方に付いて検討するという趣旨のもと進められているものです。


通信制高校の運営に関する様々な課題については、令和3年3月にガイドラインの一部改定が行われ、教育課程の編成・実施の適正化、サテライト施設の教育水準の確保および主体的な学校運営改善の徹底が測られたところです。


今回は、全国私立学校審議会連合会より出された「広域通信制高等学校に関する問題の改善について(要望)」をもとに審議が行われました。





私立学校審議会は各都道府県に設置され、私立学校の設置や廃止認可などについて都道府県知事の諮問に応じ審議し、または知事に対して建議を行う組織です。審議委員は私立学校の代表者や学識経験者で構成されています。


学校法人立の広域通信制高校ついては、本校を置く都道府県の私立学校審議会と知事部局がその設置を審議し、指導を行うよう求められています。また、株式会社立の広域通信制高校については、特区認定に市町村が審議会を設置し同様の機能を行うよう求められています。


全国私立学校審議会連合会は各都道府県の私学審議会相互の連携を図るための組織です。今回の要望では、「ガイドラインの再改定や学校評価の充実等といった小手先の対策」ではなく、「国自らがより主体的・実務的立場に立って具体的な問題解決」を図ってほしいというものです。


その背景には、2万人を超える日本一の生徒数を擁するN高等学校・S高等学校や、CMで大学進学実績を強調しつつ、まるで高等学校であるかのような誤解を与えかねないトライ式高等学院などの存在があるようです。





全日制を中心とした私立学校の代表である私学審議会が広域通信制高校をこころよく思わないのは理解できるところです。寄って立つ立場が大きく異なります。


例えば、全日制の私立高校の定員は、都道府県の生徒数を厳密に公立と私立に6対4の比率で振り分けた後、その4割の生徒を学校間で調整して定められています。資金に任せて教員や教室を増やして定員を大きくすることはできません。


これに対して広域通信制高校は他の都道府県に本校を置き、そうした定員設定とは関係なく生徒を確保していきます。既存の私立高校としてはその分計算が合わなくなってしまうのです。これまでのように中退生徒のみを拾い上げてくれる分には目をつぶれますが、N中等部などのように中学生段階から囲い込みが盛んになるとそうは言っていられません。


また私学審議会や私学部局の影響力が及ぶのはあくまで同じ都道府県の私学に対してですが、広域通信制高校は他所の都道府県の学校です。サテライト施設が都道府県内にあっても実質的には手出しができません。





全日制の高等学校にとっては、通信制高校の学習を通して同じ高校卒業資格が与えられることにも意に沿わない部分があるかもしれません。確かに通信制高校の制度の使い方によっては全日制の学習よりはるかに少ない努力で卒業資格を得ることも可能です。


ほとんどの学校が生徒数を減らす中、通信制高校のみが生徒数を伸ばして成長しています。しかし、これは大きなトレンドと考えることもできます。多くの高校生が従来型の全日制高校ではなく、通信制高校が提供する新しい高校生活を選択している側面もあるはずです。


今般のコロナ禍を経て、対面指導やICTを活用した教育手法についての考え方は大きく変わりつつあります。求められる教育の質が担保できるのであれば、むしろ通信制高校の枠組みの中に「令和の日本型学校教育」と呼べる個別最適化された教育の形があるのかもしれません。

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